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登る

 

どんな世界でも、その山の頂を目指し多くの人が登る。

 

登り初めは平坦ゆえ、ピクニック気分。

モチベーションも高く多くの人が歩いているので仲間意識もある。

 

やがて山は厳しさや険しさを増していく。

脱落者は加速度的に増えていく。

その脱落者の多くは、言い訳を考える。

反対に足を止めず登り続ける者は、そのための手段を考える。

解らないことは学ぶ。

 

やがて諦めた者は、その山の存在すら否定し始める。

当然、登り続ける者さえも同様に否定を始める。

そうしなければ、自らの存在の意味を失ってしまうから当然かもしれない。

 

山は一つ登り終えると次にそびえ立つ山が現れる。

登り続ける者と諦めた者は天地ほどの差になる。

当然登った者にしか、そこからの景色は見えない。

 

登る者は孤独だ。

しかし気にする事はない。

次のステージで新しい出会いが有る。

登りきった人との出会いだ。

 

私が尊敬する職人の1人は和食の達人。

彼の創る鮨は奇想天外。

口に入れた瞬間に味わった事の無い宇宙が広がる。

 

その彼も同じ事を経験した1人。

数少ない孤独を知る大切な人。

彼は昨年、咽頭癌を患い手術した。

手術は成功したが先日、再発が見つかる。

彼は今度の手術を最後に声を奪われる。

 

その彼が今朝電話をくれた。

声は細く痛々しいものだったが、信念を感じさせてくれた。

今、彼は手術室の中、癌と戦っている。

 

 

 

 

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