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ILFORDの新商品2種をテスト
ILFORDから新発売のファインアートペーパー2種をテストさせて頂きました。
一つはギャラリー・スムースコットン・スプライト。
もう一つはギャラリー・テクスチャードコットン・スプライト。
ドイツのメーカーですが、どちらのペーパーもイタリア製の紙です。
現在、ファインアート・ペーパーの多くはイタリアで作られていると聞くので、この商品も同様でした。
コーティングは日本でされているそうで、期待が持てます。
まずはペーパーを測定。
i1で紙白を測定したデータが下記の図になります。
上の方の緑のグラフ。
蛍光増白剤が使用されていると、このグラフの左端が高く持ち上がります。
ここから、蛍光増白剤が使用されていない事が。
また、グラフが比較的フラットである事からどの光の波長で観ても白いと言う事が解ります。
目視ではスムースコットン・ラグと比較するとスプライトの方がほんの少し青白く見えます。
測定ではbの値が
ラグ:3.48
スプライト:2.97
テクスチャードコットン・スプライトは3.7
ほんの僅かですが、この差が目視での違いとなったのでしょうか。
スプライトより、テクスチャーはやや緑っぽい印象です。
触った感触、また見た目もラグの方がスプライトよりも平滑です。
ただこの違いは比べて解るのであって、どちらか一方だけを見ても、どっちがどっちと当てるのは難しいレベルです。
テクスチャードコットン・スプライトは名前の通り、テクスチャーが規則正しく織物の様にちょうど45度の角度で並んでいます。
ペインター・スタイルの作品には合いそうです。
それぞれキヤノンPro-1000用のカラー・プロファイルを作成したので比較してみます。
ラグのデータの上にスプライトを重ねます。
半透明がラグになるので、スプライトの方が若干カラースペースは狭く見えます。
深みの有る赤や緑、青は逆に広くなっています。
ただし、プロファイルの製作時期が異なるのでインクのロット、あるいはペーパーのロットによる誤差も多少ありますでしょうから単純に比較はできませんので念のため。
ラグにテクスチャードコットン・スプライトを重ねたのが次の図。
スプライトよりも、また少しスペースは狭くなりました。
では実際にプリントしたものを見比べてみます。
準備したのはお馴染み電塾初代塾長の早川廣行 氏が作ったチャート。
塾長は全てのデジタル写真に関わる人へと使用に関しては制限されておらず、毎回使わせて頂いています。
ありがとうございます。
隣に有るのは私の作品。
ラファエロなどが描いた三美神の日本版。(^^)
もともと、マットな用紙はペインタースタイルの作品に向くことは解っていますので、ここはあえて派手な着物の色を観てみようと、この写真にしました。
どのペーパーも発色やトーンに関し違いを感じられません。
さらに目を凝らして見ると。
チャート左下の数字の10の部分の黒の再現に違いが出ました。
と言っても、これまた誤差のレベルです。
i1による測定で各ペーパーのプロファイルから読み取ると、黒に関してはL値からRGB値を算出すると
ラグ:44
スープライト:48
テクスチャー:50
ラグが他の2種の新製品より黒が締まっていると言う事が解ります。
ところが、先の目視による黒の10を再現しているのは数値上は1番成績のよかった、ラグよりも新製品2種の方がいいという皮肉な結果となりました。
チャートの白をみてみましょう。
ラグ:246
スプライト243
テクスチャー:246
しかし目視では1番左の白252は、テクスチャーが3番、ラグとスプライトが同点といった感じです。
この様に、テスターを使って出した数値と目視は必ずしも一致しないことが解ります。
ペーパーそのものに関してはどれも遜色なく、テクスチャーにのみ好みに合わせて使えばどうかと思います。
最後にモノクロの特にシャドーの階調をギリギリ再現したデータをプリントすると、紙白の特徴をより感じさせてくれました。
ラグに比べてスプライトはやや青く、テクスチャーは緑っぽく感じられました。
ただ、言えるのは色評価台の上で、目を凝らして見て解る程度です。
色に敏感な仕事をしている人には解ると思いますが、そうで無い方には違いは解らないと思います。
総括しますと、新商品2種は従来から私の愛用してきたラグとなんら遜色ない良いペーパーと言えると言うことです。
他のペーパーも含めてILFOERのファインアートペーパーは6月7,8とパシフィコ横浜で開催されますPhotonextのNAPAブースで手に取ってご確認頂けます。
また、8日には当ブースでお持ち頂いたデータを、今回ご紹介しましたペーパーに無料で私がレタッチをしてプリントさせて頂くという企画もございます。(先着順で時間の許す限り)
是非、お立ち寄り下さい。
ファインアート・プリントは欧米などではアーティストから非常に人気のある商品です。
また蛍光増白剤無添加という特性は作品の劣化という観点からもアート・シーンでは非常に重視される部分でもあります。
今後、日本でもその流れは来ると思います。
その流れに沿うようにNAPAプリント・コンペも開催されます。
ますます、目が離せないメディアとなりそうです。