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アーティストにとっての幸せ

今日はサロンのメンバーさんから質問がありました。

「好きなドキュメンタリー・フォトグラファーは誰ですか?」

という内容でしたが、正直言って私はその分野に興味が無くフォトグラファー全般的な話で言うならと言う事で、杉本博司さんとお伝えしました。

もっとも杉本さんは、フォトグラファーというよりも現代美術家と言った方がしっくりくるのですが。

私が杉本さんを知ったのは、まだアマチュアだったころ。

森美術展で開かれた回顧展「時間の終わり」の時です。

残念ながら行く事は叶わず、ミュージアムショップへ電話をし、図録を送ってもらいました。

図録を開くと、ジオラマ・シリーズから始まります。

なんという違和感、「なんなんだ、これは!?」

そこに写っているのは猛獣にも関わらず、捕らえられた画角は間違い無く至近距離。

いったいどうやって、撮ったのだろう?

ページを進めると、本来もう居ないハズの被写体が登場し始めます。

どういうことかと思うと、それはニューヨーク自然史博物館のジオラマを撮ったものだと解りました。

更に進むと、出て来たのは美しい建築物です。

真ん中には真っ白なスクリーン。

映画館とわかりましたが、なぜこれを撮ったのだろう?

彼が撮ったのは映画1本を1枚のフィルムに焼き付けたのです。

そんな事をすれば、真っ白なスクリーンが写るだけと写真をやっている者なら誰でも解ります。

ジオラマにしても、劇場シリーズにしても、普通はやらない事をやっているという事に、ハンマーで頭を殴られるような衝撃を受けました。

それ以来、私は彼の虜となってしまいました。

約20年経ちますが、彼への思いは変わりません。

新作がでる度に「やられた−」と思わされてしまいます。

人によって、価値観は異なるので誰が良くて、誰がいけないと言う事は無いと思います。

要は、目指す様な人を持つと幸せだということではないでしょうか。

写真は The BIPP Fellowship 20panels 15/20

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